光と風のなかへ & 追憶の鉄路

敗戦記念日に「風立ちぬ」を見る






人は生まれる時代を選べない

ならば さまざまな制約のなかで

限られた時間のなかで

夢を追いかけながら

力いっぱい生きたい


零戦を設計した堀越二郎の生き方に

堀辰雄の「風立ちぬ」と「菜穂子」

三つの物語を重ねあわせて製作された

宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」

この映画からは そんなメーセージがしっかりと伝わってくる




映画「風たちぬ」




一部では兵器生産者としての責任を

きちんと描いていないという批判もあるようだが

それは的外れな意見だろう


宮崎監督が描きたかった世界は

「時代より先に知識を磨くことと

知識に裏づけられた勇気」(堀越二郎『零戦』)をもって

「不可能を可能」にするために不断の努力を続けた

堀越二郎という設計者の生き方だからだ


これまでの堀越二郎といえば

海軍から過酷な要求をつきつけられて

悪戦苦闘しながらそれを見事に実現していく

そんなイメージが強かったが

映画の堀越は 美しい飛行機を作りたいという

夢のほうが先にあって 海軍の過酷な要求も

みずからの夢を実現させていくバネのひとつにすぎない

もしかしたら こちらのほうが堀越の実像なのかもしれない


映画に登場する飛行機は 昭和10年に完成した「九試単座戦闘機」

零戦の登場を期待していた人には 物足りないかもしれないが

この飛行機こそ「世界の常識を破った戦闘機」であり

「日本航空技術を自立させ 以後の単発機の型を決定づける分水嶺」

となった「航空技術史の最も輝かしい第一ページを飾る」飛行機なのだ

その飛行機の完成をもって 菜穂子との物語を終わらせたことは

零戦の歴史にも詳しい宮崎監督の卓見だろう


関東大震災の焼け野原から見事に復興した東京

それが帝都復興祭から わずか15年でふたたび焼け野原になる東京

さらに南京や重慶を爆撃する海軍の九六式陸上攻撃機

その世界最初の組織的な戦略爆撃をそっくりまねされて

B29の大編隊で空襲される日本

映画には戦争の愚かさもきちんと しかし静かに描かれている




映画「風たちぬ」




この映画のもうひとつの見どころは

9600 8620 EC40 さらにダブルルーフの客車やねじ式連結器など

大正から昭和初期の鉄道が ふんだんに登場すること

もしかしたら飛行機よりも 登場シーンが多いかもしれない

細かなことを言えば 東海道線の急行列車をC56が牽いていたり

EC40が10000形の番号のまま軽井沢側について客車を牽引し

アプト式のラックレールをきちんと描きながら

集電のための第3軌条を描かないなど(これでは機関車が動かない)

ツッコミどころはそれなりにあるが

古き日本の風景を走る鉄道がドラマを盛り上げる

漫画だからこそ出来た 感動的な場面といえよう

 
そしてもうひとつ 大切な舞台装置となっているのが 「風」

風に飛ばされた二郎の帽子をつかむ菜穂子

飛行機に託した二郎の想いを身を乗り出してキャッチする菜穂子

二郎もまた菜穂子の帽子を全身でつかみ

風に飛ばされた菜穂子のパラソルを全力でつかむ

けれども 最後は風とともに消えていく菜穂子をつかめない

そして流れてくる 荒井由実の「ひこうき曇」


大学生の頃 レコードがすり切れるまで聞いていた

荒井由実のこの曲が まるでこの映画のために作られたように

エンディングに流れてくると もう涙がとまらない









宮崎駿監督 映画「風立ちぬ」

映画史に残る名作だと思う




チネチッタ CINEMA8



GX200
2013.8.15.撮影


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